こんにちは。
今回は、
アザラシを眺めミオグロビンから有酸素能力やマラソン持久力を考える
というテーマです。
アザラシやクジラなどの海棲のほ乳類は、ほ乳類ゆえにエラがなく肺呼吸なので、水中で呼吸することはできません。
にもかかわらず、彼らは長い時間を潜水で過ごすことができる上に、水中を泳ぐという形で運動しながら過ごしています。
肺呼吸なのに息を止めるのが得意で、海で狩りをするように適応した動物についてお話ししましょう。
引用元:クジラやアザラシはどうして海の中で窒息しないのか?
例えばマッコウクジラとゾウアザラシは、水中に1~2時間もとどまることができます。これは、かなり見事なことです。
また、アカボウクジラは、137分30秒という哺乳類の最長潜水記録を保持しています。これほど長い時間、海に潜っていられるなんて、彼らの体の中では、一体どうなっているのでしょうか。
これと同じような感覚で訓練されていない人間が潜水すると、息継ぎなしでは静止状態で約1分前後で酸欠で苦しくなります。
ちなみに水中で息を止める長さの世界記録は現在の記事時点で24分03秒らしく、どうやら訓練次第で伸ばすことができるようです。
話を戻して、人間と海棲ほ乳類の水中での活動時間の違いはなんなのかという点と、この人間と海棲ほ乳類の違いを、人間の体に少しでも活かすことが可能であれば、マラソンのパフォーマンスに良い方向に影響を出すことが可能なのではないかと思い、調べてみることにしました。
今回の記事は

- ランと直接的に関係ない角度からも、運動と呼吸について興味がある
- 海棲ほ乳類はどうして長時間にわたって潜っていられるのか興味がある
- いつもと違う持久力アップへの切り口が見つかれば
こういった方にとってお役に立てるのではないかと思います。
事の発端は仙台うみの杜水族館

どういうことかというと、個人的な話になりますが先日に仙台うみの杜水族館に行ってきました。
アザラシの潜水時間が長い
何も考えずにたき火でも眺めるように呆け半分にアザラシが泳ぐさまを眺めていると、ふと疑問が浮かびました。
アザラシは肺呼吸なのに潜水時間も潜水での運動時間も長い
もちろんアザラシは海の生き物なので、そういうものだといわれたらそれまでですが、もう少し踏み込んでみるとそれなりの理由があるようです。
ブラッドシフト
まず、海棲ほ乳類たちは水中に潜水すると、心拍数を下げたり脳や心臓など以外の器官への血流を制限して酸素の消費を減らすなどなど、水中への適応性があり、この機能をブラッドシフトと呼ぶそうです。
このブラッドシフトは人間にも起こるようで、環境などの要因で長く潜水する人間にも同じような適応が見られるようです。
日本の海女さんや、インドネシアのバジャウ族と呼ばれる民族がそれにあたるそうです。
なのですが、水中での適応はランニングとは少し遠い気がするので他をあたってみます。
ミオグロビン
アザラシやクジラなどの水中に潜る海棲ほ乳類には体内のミオグロビンが非常に多いということです。
ミオグロビンとはヘモグロビンと名前が似ていますが、
ヘモグロビンは脊椎動物の赤血球の赤い色素で、酸素と結びついて運搬するはたらきがあります。
ミオグロビンは筋肉の中に存在していて、筋肉中や体内に酸素を溜め込む働きがあり、酸素分子を必要なときまで貯蔵する色素タンパク質です。
ミオグロビンというとマグロなどの死ぬまで泳ぎ続ける回遊魚の筋肉に多く含まれることで有名で、マグロの赤身の色を形成する成分として知られています。
マグロは死ぬまで泳ぎ続けることは有名な話です。
ずっと泳ぎ続けてたら疲れるじゃんと思いますが、マグロの死ぬまで泳ぐ体力はこのミオグロビンが非常に多く筋肉に含まれているためです。
名称 | 1kgあたりミオグロビン |
マグロ | 5~6mg |
カツオ | 1.5mg |
タイ | 0.06mg |
一方で普段の動きがあまり多くないタイやヒラメなどの白身魚にはミオグロビンは多く含まれず、その結果として、身が白い白身の魚として見た目にわかりやすくなっています。
人間の筋肉でも同様のことがいえます。
速筋繊維は白っぽい色をしているので白筋と呼ばれていて、ミオグロビンが多く含まれません。
赤筋と呼ばれる遅筋繊維にはミオグロビンが多く含まれていて、主に低負荷で有酸素運動と一般に呼ばれる負荷の運動で主に使われる筋肉といわれています。
ミオグロビンは増やせるか
ここまでの話で、
長い時間にわたって潜水無呼吸で泳ぐことのできるアザラシや、死ぬまで疲れずに泳ぎつづけるマグロ(疲れているかどうかはマグロに聞いたことはないのでわからないが)は持久力が高いと考えたときに、人間との違いは圧倒的に多いミオグロビン量が一因としてあると考えることができます。
ミオグロビンは酸素を筋肉中に蓄える
ミオグロビンは海棲ほ乳類や回遊魚にも多く含まれ、人間では遅筋に含まれる
と、ここまで考えたときに、では人体の遅筋におけるミオグロビン量をいくらかでも増やすことが可能であれば、持久力およびマラソンタイムなどに影響を及ぼすことができるのではと考えることができます。
ということで、ミオグロビンの量を増やすことができるのか、そしてミオグロビン量を増やすためにはどのような方法があるのかについてを調べていきたいと思います。
遅筋を鍛えて増やす
たぶん王道ど真ん中の方法ではないかと思います。
ミオグロビンが遅筋に多く含まれるということで、遅筋を鍛えて身体におけるミオグロビンの総量を増やすということになります。
有酸素運動能力が低負荷のロングジョグなどで鍛えられるということも、こういった点からもうなずけるのではないかと思います。
ネックとなるのが、このブログで何度か取り上げていますが、遅筋や有酸素運動能力を向上させるトレーニングの恩恵をしっかり全開で受け取ろうとなると、それなりのトレーニング時間を要します。
そういった速筋や最大酸素摂取量(VO2max)や乳酸性作業域値(LT)の時間を削って遅筋に特化したトレーニングに時間を費やすと、単純にスピードを出すことが出来なくなってしまうので、VO2maxやLTのトレーニングに費やす時間を確保しつつの遅筋トレーニングや有酸素運動トレーニングをすることが必要となります。
どちらか一方ではなく、本来ならば両方にウェイトを置くのがよいという話です。
高地トレーニング
持久力のトレーニングとして有名な高地トレーニングおよび低酸素トレーニングですが、その効果は酸素濃度が低い環境に適応するという点から、赤血球を増やす効果のイメージが強いかもしれません。
高地トレーニングの効果として
- 赤血球、ヘモグロビンおよび血流量が増加
- 骨格筋の毛細血管の発達
- ミオグロビン濃度の増加
- ミトコンドリアの増加
などの効果が期待できるとされています。
上記のような期待される効果がある場合、どの増加効果も酸素の運搬および貯蔵能力が向上することで、持久力の向上が期待できます。
ミオグロビンの増加も期待できるということなので、目的のトレーニング効果も得られるのですが、高地トレーニングという環境を手にいれるのが困難なことがネックです。
ですが最近では、低酸素ルームなどもあって平地や近場で手頃に低酸素環境のメリットを受け取ることができます。
できれば高地トレーニングのように朝から晩までずっと低酸素環境にいることができれば効率よく順応することができるようで、2週間程度から効果を感じることができるようです。
おそらく低酸素ルームへの通いだと、そういった順応のような効果の効率は高地に比べると低く、低酸素環境で運動するという部分においてのみトレーニング効果があると考えられます。
鉄の摂取
ヘモグロビンもミオグロビンも鉄を含むたんぱく質で、体内の鉄が不足すると酸素の運搬や利用が上手くいかないことになります。
また、鉄不足は鉄欠乏性貧血などの一因としてもあることと、積極的に摂取しなければ鉄不足になってしまう場合や、ヘモグロビン値が正常でも、フェリチン値が低値になることで分かる隠れ貧血とも呼ばれる潜在性鉄欠乏症として倦怠感などの症状になることもあります。
30数年前に比べると、日本人の1日の鉄の摂取量が半分程度になってしまっていることもあり、積極的に鉄の摂取を意識を向けるのが鉄不足を避けることへとつながります。
最後に
文中にもありますが、あくまで海棲ほ乳類と人間では生物としてそもそも異なるので前提条件が違います。
とはいえ、海棲ほ乳類や人間の違いを踏まえた上で、ミオグロビンや遅筋などの要素による酸素の消費についての部分では、トレーニングや摂取するもので改善の余地が期待できると考えられるのではないかと思います。
また、現存する有効なトレーニング方法の効果を再確認できる部分もあったと考えることもできます。
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